接客について考える

先日、妻の愛車の修理(といっても、テールライトの球切れ交換だが)にカーディーラーへ赴いた。

エントランスを潜り抜けると、スーツ姿の女性スタッフが店内の定位置からゆったりと、それでいてきびきびとした動作で出迎えてくれる。店内に入ってからではなく、敷地内に足を踏み入れてから接客は始まっているのだ。う~ん、悪くはない。

リニューアルしたての店内はすっきりシンプルな雰囲気で、ブランドを壊すような調度はなく、大人の空間を演出している。割と好みの雰囲気。良し。

当然、スタッフもどこかのホテルのコンシェルジュのような振る舞いだ。ま、ちょっと急造的なぎこちなさは否めないが、不快なレベルではない。ただ、おもてなしの気持ちが入っているかと言えばまだまだその域に達しているとは言い難い。この時点での僅かな引っ掛かりが後の雲行きを変えることとなるのだが、この時点ではまだ微笑ましいレベル。

用件を伝えると、待ち時間の間ショウルームへ促された。ここで男性”コンシェルジュ”登場!で目当ての車の観察を邪魔されると思いきや、飲み物のご案内。

お手拭とコーヒー、クッキーのおもてなし。ここで、感心したのはお手拭。コンビニ等でもらえる薄手のものでなく、厚手で大きなナプキン、しかもアロマの香り付き。それと、クッキー。その辺で手に入る一目瞭然の菓子メーカーのそれでなく、デパ地下御用達風デザイン包装のそれである。この辺りの最低限のおもてなしはディーラーレベルでは合格点。普通なら、紙コップのベンダーコーヒーが関の山だ。

しかぁーし!ここからは曇天空模様。

通されたテーブルには前の客の飲みかけコーヒーとクッキーのから包み、お手拭が散乱。撤収は何と!コーヒーが運ばれてきた時に一緒に行うという合理的な行動を見せたではないか!
目の前に残された、その前にいた客に渡したであろう”コンシェルジュ”の名刺が何とも悲しい。

ここで感じたのは、接客コンサルの指導(だと思われる)で表面的には取り繕っているが、まだまだ本物になっていないという実感。

そして極め付け。

修理代金を精算した後、正面の男性の「ありがとうございました」の声に続き、左隣でパソコンを操っているキャリア風女子の続く声は私にではなく、目線と一緒に完全にキーボードに向かっていたことを僕の左目は見逃さなかった。どうやら、彼女には僕がキーボードに映っていたようだ。トホホ・・・。

ここでの教訓。

仕事に取り組むうえで必要な共通の理念を全スタッフが共有していなければ、いくらスタッフに良い教育を施しても実にならないどころか、かえって不快な思いを与えてしまうということ。接客はおもてなしであり、お客様の立場をどれだけ先読みして表現できるかだ。そして、そのマインドを全員が共有していることに尽きると思う、

これはもう理念の問題。スタッフに接客を教えるんじゃなく、あなたの仕事はなんだ!と叩き込むべきである。

もちろん、このことは当社においても言える事。早速この事例を教訓として全社員で共有し、さらなる理念共有の題材として大いに活用させていただくとしよう。

良い気付きをありがとう!


  1. 素晴らしい観察力ですね。接客の連携プレーの難しさを思い知らされますね。社員の温度差を埋めることは本当に大変ですよね。多分陰日向なくそういうモチベーションでいないとすぐに見破られてしまいますよね。所長さんは企業の覆面サービスリサーチマンとして企業から請け負いコンサルすると面白いですね。ミシュランの調査員のような仕事ができそうですね。

    1. >はまむら 様

      コメントありがとうございます(^^)

      接客だけに限らず企業活動におけるすべてのサービスについて、どれだけ根っこの部分が全社員で共有されているかが評価が分かれるポイントだと、最近特に思うのです。

      「おもてなし」とひとくくりに言われている行為も、全てはお客様が感じて発していただくことで成り立ちます。もうマニュアルで通り一遍のサービスは見抜かれてしまうところが多いのだと。

      なぜ、このサービスをお客様に提供しているのか?根っこの部分を深く共有してこそ、寄り添えるサービスが生まれてくるのではないでしょうか。

      我が社も、私もまだまだ勉強です^^;